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「造り・伝え・活かす」日本の造園家 = Biocultural Environment Designer 細野達哉のブログ

生物文化多様性 (Biocultural Diversity)と日本の庭園文化

生物文化多様性(Biocultural Diversity)という考え方が世界中で語られ始めています。

 

日本では2016年に石川県で第1回アジア生物文化多様性国際会議が開催されました。

 

この動きは、従来の生物多様性の考え方が捉えきれていなかった「自然と人間の営み」の関係の部分を補完し、我々の将来にとって真に持続的な取り組みについて世界中が気づき、考え始めたことを伝えています。

 

私はここに、日本の造園家の新たな時代における大義を見出したいと考えています。

 

なぜなら、私が考える「造園」とは「自然と人間の関係をつくること」であるからです。そして、私たちの文化を象徴する「日本の庭園」は、時代の思想や地域の気候風土に根ざしつつ、自然と人間の営みを合理的な空間美として調和させ、その中に様々な芸術を応用しながら、1000年以上ものあいだ造り続けられている、自然共生のパイオニア的空間文化だからです。

 

この日本の庭園文化を、改めて世界に向けた「生物文化多様性空間モデル」として捉え直し、持続的で豊かな環境づくりに活かしたい。

 

いま日本の造園家や庭師は、何のために日本の庭園を学び、造り、維持するのかという疑念の中で職能のプライドとモチベーションを失いつつあるように思います。しかし、今こそ自然と芸術文化の両方を知り、その関係性をハード・ソフト共にデザインできる職能として、日本の造園家は世界が求める新たな存在 ”Biocultural Environment Designer”として立脚できるのではないかと考えています。

 

このブログでは、東京の小さな小さな庭師の家系に産まれた造園家である私が、自然と人間の関係に基づいて持続的で文化的な暮らしを整える新たな職能、"Biocultural Environment Designer"としての日本の造園家の在り方を模索するために、日々徒然に考えたことを記していきたいと思います。