オレゴン州ポートランド 「共感」という価値観
この街は、良い意味でどこか「似た者同士」が集まる街のような気がします。
特別有名な観光地があるわけでもない、ただのオレゴンの小さな田舎の街ですが、なぜこんなに注目されて人が集まるのか。それが街の歴史や人々に触れるにつれて、徐々に分かってきました。
この街には、物質的な豊かさよりも精神的な充足を求める価値観が根付いています。
その価値観を端的に表すなら、「感応(官能)」と「共有」。
つまり「共感」でしょうか。これに尽きると思います。
感応とは、五感でしか感じ得ないこと、例えば、料理が美味しいとか、散歩して気持ちが良いとか、品物の手触りが心地良いとか、そういう情報には置き換えられない感覚に対する反応という意味です。もちろんエロい方の官能でも同じことです。
共有とは、皆でシェアすることです。ポートランドの人々は、自分が良いと思ったことは独り占めしないんですね。そういった感応的なことも、惜しまずイベントにしたり、店を出したり、シェアしようとします。例えば、雪が降ると街の坂道で急にオフィシャルなスキー大会が始まったりすることもあるそうです。良くも悪くも採算的なことは度外視で、皆でそれを楽しみます。
この街の最大の魅力は、市民のこの「価値観」です。行政もこれを充分に知っています。なぜなら、行政職員もまたポートランド民なのです。
つまり、この街は「市民の価値観のブランディング」に成功していると感じています。
これは、現在の日本の街づくり、特に地方行政の舵取りでは参考にしてほしい事柄です。ここに、Stump Town(切株の町)と言われた1960年頃から現在のGreen City(緑の街)と言われるまでに発展を遂げてきた、ポートランド流の街づくりの「スタイル」を感じています。